12/29/2017

最相葉月さん「星新一 1001話をつくった人」

今日は本の紹介です。
最相葉月さんの「星新一 1001話をつくった人」というノンフィクションです。
ショートショートの神様星新一の伝記ですね。

星新一の作品と出会ったのは中学生の頃でした。
私は小学生時代本を読むのが嫌いで、夏休みの宿題の読書感想文は本当に嫌でした。
しかし中学に入ると、遊んでばかりでとても本なんかには見向きもしない友人が
 「星新一の小説は面白いよ。読んでみな。」
と言って文庫本を貸してくれました。
たぶん、「ボッコちゃん」だったと思いますが、まず、こいつも本を読んでいるんだということに驚き、そして貸してもらった文庫本をあっという間に読み切ってしまった自分にひどく驚いたことを覚えています。
といって、私の本嫌いが治ったわけではなく、高校生になっても読むのはマンガと星新一だけでしたので、星新一だけが私にとっての例外だったのです(このあたりは、私のこのブログで「星新一」で検索していただければ、似たような話が書かれています。)

私の星新一好きは脇に置いておいて、この本を書いた最相葉月さんという方に非常に興味を覚えました。
これまで伝記というものがどのように書かれるのかなど考えたこともなかったのですが、この本を読んで、これは相当の取材と調査、そして、得られた情報の整理・分析、検証を経て書かれたものなんだ、ということがわかりました。
本人がお亡くなりになってからの取材ですので、本人の幼少の頃の出来事などはご遺族でもわからないことと思います。
そういうこともいろいろな手段で調べ上げ、この作品となったのでしょう。

こうなると、単にノンフィクション作品とか伝記というよりも、ほとんど研究論文にちかいように思います。
本当にすごいなと思いました。





古絵葉書 関東地方の名所(その5:奥秩父)

古絵葉書関東地方の名所その5は埼玉県奥秩父です。
カラー写真ですが、裏の通信面を見ると「郵便はがき」と濁点付きで右から書かれているので昭和8年~20年の頃の発行と思われます。

通信面の仕切り線のところに「三峰神社」、右下に「撮影・清水武甲」と書かれています。(これらは左から書かれています。)
撮影者の清水武甲さんをネットで検索すると、「コトバンク」で見つかりました。
大正時代に秩父に生まれ、昭和から平成にかけて秩父を撮り続けた写真家とのことです。
たくさん写真集も出されているほどの方のようです。

奥秩父の旅 初夏の栃本谷
 現在、ネットにはたくさんの方が撮影した写真がアップされていますが、ここで紹介した4枚の絵葉書と同じ場所から撮影された写真もたくさんあります。

それらの写真と比べると、奥秩父の姿は何十年も時が経過しても大きな変化は無いように思えます。


三峰神社奥宮の展望
この美しい自然がこの先も長く続くのでしょうか。

古い絵葉書を見ていると今の姿と比べてみたくなります。
たいていの場合、跡形もないくらい変わってしまっている場合が多いのですが、ぜひ清水武甲さんが見た風景を私も見てみたいと思います。

奥秩父の旅 雲取山の展望

奥秩父の旅 秋の金蔵落

12/14/2017

古絵葉書 関東地方の名所(その4:川口 善光寺・荒川)

関東地方の名所の4回目は埼玉県川口です。

私の祖父が川口市役所に勤めていたので川口に関する資料は結構あります。
私のブログで「川口」で検索してもらうといろいろと出てきます。
今回の川口善光寺や荒川放水路の絵葉書も過去に紹介しました。
川口市 市制施行記念絵はかき

今回の絵葉書は、先に紹介した昭和8年川口市制施行よりも古い写真のようで、通信面の情報から明治43年~大正7年頃のものと思われます。

武州川口町善光寺公園及大玄関
雪が降った後の写真ですね。
中央の大きな石碑は今も残っているのでしょうか。
昭和43年の災禍、最近の荒川堤防工事との干渉のため、昔の面影は全く無くなってしまったと聞きましたが、どこかに移設されたのだとよいのですが。
善光寺境内ヨリ望見シタル荒川船橋ト鉄橋

下は善光寺からの荒川の景色です。手前の小屋が船着き場でしょうか。
右上の鉄橋が東北本線の荒川橋梁だとすれば、明治18年初代荒川橋梁竣功、明治28年複線化工事竣功ですので、その当時のものですね。
このあと、関東大震災で被害を受け修復工事が行われ、さらにその後2代荒川橋梁を新設することになり、初代橋梁は撤去されたそうです。

12/13/2017

古絵葉書 関東地方の名所(その3:下館 勤行川)

茨城県下館(現在は筑西市)の勤行川河畔は蛍の見どころだったようです。
筑西市のHPなどをいろいろと検索しても、「遡上する鮭の姿が見られる」というのはいくつか見つかりますが、なかなか蛍の名所というキーワードは引っ掛かりませんでした。
(下館名所其六)勤行河畔蛍の名所
正面に見えるのは筑波山ですね。この地形から場所が特定できますかね?
地元にお住まいの方ならわかるかもしれませんね。橋の上から撮影されたのでしょう。
写真には「発売元古島初太郎」と書かれています。

この絵葉書は大正7年~昭和8年頃の発行と思われます。
モノクロで不鮮明なところがありますが、右上にやや不自然な三日月らしきものが見えます。おそらくこれは後から描き込まれたのでしょう。
また、写真下部に川面に白い点のようなものが見えますが、これは蛍なんでしょうか?
虫眼鏡でよく見ると小さい白い点も結構たくさん見えます。
写真が不鮮明なのが原因なのか、描き込まれたのか、それとも本物の蛍の光なのかよくわかりません。(後から描き込まれたと思われる絵葉書は「大磯」でもありました。)

下館の絵葉書をもう一枚。これは名所というわけではありませんが、おそらく上の勤行川の絵葉書と同じころのものと思われます。(「岡本写真館撮影」と書いてあります。)
(真壁郡物産共進会)下館町旅館新小島楼 電話百三十三番
2階の高さくらいまでありそうな門柱の上部にはモダンなデザインのアーチが取り付けられていますね。そして、門、塀に沿って見越しの松。
玄関上の「新小島楼」と書かれた看板も立派なものです。
玄関前には植木鉢の菊が置かれていて、お客様のお帰りを迎えているようです。
2階で新聞を読んでいるのは宿泊のお客様でしょうか?
多少形は変わっているかもしれませんが、今も営業が続いているのでしょうか?
これだけ立派な旅館ですから、地元ではご存知の方がいらっしゃるのではないかと思います。
ご存知の方がいらっしゃいましたら、情報をいただけると嬉しいです。

12/12/2017

古絵葉書 関東地方の名所(その2:埼玉 吉見百穴)

私の住む埼玉県の名所の一つ、吉見の百穴遺跡の絵葉書です。
武蔵国比企郡吉見村百穴ノ図

吉見百穴をご存知でしょうか?
埼玉県比企郡吉見町にある国指定史跡です。
私は小学生の時に社会科見学で見に行きました。

以下、吉見町役場のHPからの引用です。(吉見町 吉見百穴
 吉見百穴は古墳時代の末期(6世紀末~7世紀末)に造られた横穴墓で、大正12年に国の史跡に指定された。横穴墓は丘陵や台地の斜面を掘削して墓としたものであるが、死者が埋葬された主体部の構造は古墳時代後期の横穴式石室とほとんど同じである。百穴が分布する一帯は凝灰質砂岩と呼ばれる比較的掘削に適した岩盤が広がっており、当時の人々は掘削するのに適した場所を探して横穴墓を造ったと考えられる。吉見百穴は明治20年に発掘調査が実施されているが、わずかな写真と出土品を残すのみで詳細な情報はほとんど残っていない。現在確認できる横穴の数は219基である。
このはがきの発行時期はというと、いつものように「古い絵ハガキの年代推定法」を参照すると、
 ・切手貼付部に「内国には一銭五厘切手 外国には四銭切手」と書かれている。
 ・右から「郵便はかき」(濁点なし)と書かれている。
 ・宛名部と通信部の区切り線がない。
ことから明治33年~明治43年頃と思われます。

上で引用した吉見町のHPには「吉見百穴は明治20年に発掘調査が実施されているが、わずかな写真と出土品を残すのみで詳細な情報はほとんど残っていない。」とありますので、当時の貴重な写真かもしれませんね。

12/11/2017

古絵葉書 関東地方の名所(その1:前橋 臨江閣新館)

関東地方の絵はがきが何枚かあったので、紹介したいと思います。

まずは、群馬県前橋の臨江閣新館です。


ネットで検索するとありました。
前橋市のHPの歴史・文化財関連施設のページに「臨江閣」について詳しく解説されています。
臨江閣とは
 臨江閣は近代和風の木造建築で、全体は本館・別館・茶室から成り、本館と茶室は県指定、別館は市指定の重要文化財となっています。
 本館は明治17年9月、当時の群馬県令・楫取素彦(かとり もとひこ)や市内の有志らの協力と募金により迎賓館として建てられました。また茶室はわびに徹した草庵茶室で、京都の宮大工今井源兵衛によって明治17年11月に完成しました。
 別館は明治43年一府十四県連合共進会の貴賓館として建てられた書院風建築です。
絵葉書には(前橋名勝)臨江閣新館 と書かれていますが、おそらく上の解説文の「別館」のことでしょう。本館→別館の順で作られたのでしょうから。

葉書の通信面は、濁点なし・右から「郵便はかき」で、仕切り線が三分の一の位置にありますので、明治43年~大正7年ころに発行されたものと思われます(※「古い絵ハガキの年代推定法」参照)。

別館の竣工が明治43年ですので、ちょうど完成したばかりの写真かもしれませんね。

ちなみに発行は「春木堂」とあります。
検索すると、明治35年開業の老舗のようです。
古絵葉書をいろいろと調べていると、それを発行した会社が今もしっかりと活動されているケースが多いことがわかります。
100年以上も地域で企業活動を継続、拡大されているのは本当に素晴らしいことだと思います。

12/10/2017

絵葉書 大正後期~昭和初期の台湾

台湾は日清戦争後清国から割譲され、日本の統治下にありましたが、その当時の絵葉書5枚です。
通信面が全体の二分の一で、右から「郵便はかき」(「か」が濁点なし)の絵葉書なので大正7年~昭和8年頃に印刷されたものと思われます。
(※「古い絵ハガキの年代推定法」参照)

さらに、そのうちの1枚に大正8年に完成した台湾総督府庁舎の写真がありますので、それ以降の絵葉書だと思います。

●臺灣總督府廰舎(臺北)General Office Formosa

●臺南市臺南公園 Taiwan Park Formosa

その他、アミス族、タイヤル族の女性を写した絵葉書が3枚ありました。
そのうちの1枚は書き損じで、宛先の住所・名前と差出人の名前が書かれているのですが、いずれも私のご先祖様ではありません。
しかし、驚いたのは宛先の住所が、私が30代後半に転勤で家族と暮らしていた茨城県内の社宅すぐ近くの神社だったのです。
不思議ですね。
我が家の物置に眠っていた書き損じの絵葉書に書かれていた住所のすぐ近くに、その後60~70年を経て私と家族が住み、その神社に参拝していたのですから。
機会があれば絵はがきを持って尋ねてみたいと思います。

ところで、最近知ったのですが、こういう昔のモノクロの写真をAI技術で自動色付けをしてくれるサイトがあります。(ディープネットワークを用いた白黒写真の自動色付け

上の写真を実際に試してみたら、なんとも素敵な写真になりました。



庁舎は最近改築された東京駅のようだと思いましたが、設計者の長野宇平治は、東京駅の設計者の辰野金吾の弟子で、しかも、この庁舎設計では辰野のアドバイスも受けたと書かれています。(Wikipedia:台湾総督府
なるほど、ということですね。

12/09/2017

「知の再発見」双書シリーズ

創元社の「知の再発見」双書シリーズです。
芸術、科学、歴史など私の興味を引くテーマで、カラー写真、図が豊富なので、何冊か購入しました。

既に、このシリーズでは
●ジャン・マリニー 吸血鬼伝説
●フランソワーズ・バリバール アインシュタインの世界
を紹介しました。

今回はこの2冊です。


●尾本圭子 日本の開国
19世紀末に来日したフランス人エミール・ギメから見た日本を紹介した本です。
ギメに同行したフェリックス・レガメの絵は明治の日本の人々、生活を知るうえでよい記録だと思います。

●ジョルジュ・ジャン 記号の歴史
古代から現代に至るまでの様々な「記号」について解説されています。


「知の再発見」双書シリーズでは、このほかに「不思議の国のアリスの誕生」があります。
不思議の国のアリスは、英語版を日本語版と比較しながら読みました。
結構複雑な言葉遊びがあちこちに見られ、すっかりファンになりました。
アリス関係の書籍はいつのまにかずいぶんたまりました。

そのうちにアリスの本もご紹介したいと思います。

12/07/2017

陸上自衛隊の装備

北朝鮮問題など、緊張した状況が続いています。
いざという時に頼りになるのが自衛隊です。
陸上自衛隊の戦力を解説してくれるのがこの本です、

●毒島刀也 陸上自衛隊「装備」のすべて(ソフトバンク クリエイティブ)

陸上自衛隊の科ごとに、それぞれの役割とその役割を担う装備について詳しく解説されています。
2012年の発行の本で、戦車では10式戦車まで掲載されています。
以前、富士総合火力演習を見に行く機会を得ることができ、その予習のために購入しました。
頼りにしてます、自衛隊の皆さん!

12/05/2017

古絵葉書「川越 喜多院 大師堂・五百羅漢」

川越の喜多院五百羅漢と大師堂の絵葉書です。
記念スタンプが押されていて、「武州」「明治四十四年四月二十二日」という文字は読めるのですが、スタンプの上部と中央部の文字がよくわかりません。


五百羅漢は、ネットで今の姿を見ても全く変わりませんね。
下が舗装され地面がかさ上げされたせいでしょうか、今の方が正面の階段が一段少なくなったようです。 

ネット情報によれば、大師堂は昭和46年に解体修理を行ったようですので、それ以前の建物のはずです。
ちょっと修理後の姿と違っているような気がしますが、実際に見たこともないのでよくわかりません。斜めの方向から建物正面にアクセスする配置からすると、同じ建物なんでしょう。

五百羅漢は、いろいろな表情の羅漢さんで有名です。
一度誰かのそっくりさんがいないか、見に行きたいと思います。

昭和二年特別大演習観艦式記念

昭和二年十月三十日に横浜沖で特別大演習観艦式が行われたそうです。
その時の記念印がありました。

1銭5厘の官製はがきに記念印が押されています。

Wikipediaの「観艦式」には、次のように書かれていました。
大演習観艦式
1927年(昭和2年)10月30日、横浜沖。
参加:計158隻(66万4,292トン)、飛行機82機、飛行船3隻

しかし、158隻というのは物凄い規模です。
今では自衛隊記念中央観閲行事を陸海空3自衛隊が持ち回りで行うことになり、海上自衛隊は3年に一度観艦式を行っていますが、せいぜい50~60隻程度だったと思います。
一般の人たちは、海岸から望遠鏡や双眼鏡で見ていたのでしょうか?

以前このブログで「大正元年陸軍特別大演習記念」の絵葉書を紹介しましたが、よくこのような資料が残っているものです。


12/04/2017

絵葉書「所澤町 山田屋呉服店奥庭」

埼玉県の絵葉書です。

所沢の山田呉服店奥庭と書かれています。
山田呉服店といえば、以前このブログで明治末から大正初めころの「アンティーク絵葉書 「飛行機」」を紹介しましたが、絵葉書の下に山田屋呉服店と書かれていました。


またここで「山田呉服店」の名前にお目にかかるとは思いませんでした。
花がたくさん咲いている綺麗な庭園です。
呉服を買いに来たお客様をお通しする部屋に面しているのでしょうか?

はがきの裏側を見ると、右から「郵便はかき」と書かれていて、通信文が全体の三分の一ですので、明治43年~大正7年ころのものと思われます。

12/03/2017

絵葉書「大本山 永平寺」(つづき)

昨晩、永平寺の絵葉書を紹介しました。

朝起きて、新聞の日曜版を見るとちょうど永平寺が特集されていました。

絵葉書にほとんど同じ構図の写真がありましたので、並べて掲載します。

読売新聞日曜版(2017年12月3日)1面

絵葉書「大本山永平寺」(昭和30年頃:表現社)

絵葉書「大本山 永平寺」

カラーの絵葉書です。
福井県にある曹洞宗大本山永平寺の絵葉書です。


通信面上部の「郵便はがき」が左から書かれているので、戦後発行のものですが、昭和何年ごろかははっきりしません。

以前このブログで、昭和30年頃の福井県の地図や福井県の観光名所の東尋坊の絵葉書を紹介しました。

おそらくこの永平寺の絵葉書も同じころのものでしょう。

絵葉書のケースの裏を見ると、発行社の記載があります。


一部文字が隠れていますが光に透かして見ると、
 CREATED BY HYOGENSHA CO., LTD.   KYOTO, JAPAN
と読めます。

「京都 HYOGENSHA」でGoogle検索すると…。

ありました、ありました。
表現社 ホームページ

会社案内のところを見ると、まさに絵葉書と同じ「HYOGENSHA CO.,LTD.」の記載がありました。
昭和8年創業のはがきや便箋、折り紙などを制作、販売されている歴史ある会社のようですね。
京都に行く機会があれば、一度お邪魔してみたいと思います。

12/02/2017

グリム童話

●鈴木晶 グリム童話(講談社)

グリム兄弟といえば、赤ずきんちゃん、白雪姫などいかにもメルヘンといった童話のイメージですが、それに隠されたメッセージ、教訓といったものを解説した本です。

グリム童話は、兄弟が活躍した19世紀の世相が反映された物語のようですが、歴史的な背景と結びつけるといろいろな解釈ができ、奥が深いな、と思いました。
しかし、現代の私たちは、逆に当時の世相などが表に出ないように意図的に手が加えられたものを読まされているということなのかもしれません。


私は、複雑な背景なしの「めでたし、めでたし」のストーリーの方がいいですね。

12/01/2017

悪魔の本

今日は悪魔の本です。
西洋絵画の題材になっている悪魔を見て興味を持ち、何冊か本を読み始めたのですが、実は、小さいころから、水木しげるさんの「悪魔くん」をはじめ、星新一さんのショートショートなど身近に結構「悪魔」がいたものです。
魔女とか魔法使い、怪物まで範囲を広げると、「奥さまは魔女」「怪物くん」「幽霊城のドボチョン一家」「エコエコアザラク」などなど…。
日本の妖怪に対して西洋の悪魔、って感じですかね?
悪魔は聖書とも関係しているようですが、日本の妖怪は特に宗教とは深い関係はないのでしょうか?

●馬杉宗夫 黒い聖母と悪魔の謎/キリスト教異形の図像学(講談社)
●ジャン・マリニー 吸血鬼伝説(創元社)
●池内紀 悪魔の話(講談社)

「悪魔の話」の池内紀さんはドイツ文学者でドイツにまつわる著作がたくさんあります。私は以前仕事で2~3ヶ月西ドイツにおりまして、ドイツの生活、文化には興味があり、他にも池内さんの本を何冊か読みました。
そのうち、池内さんが翻訳されたゲーテのファウストは現代風な文章でとても読みやすく、海外古典文学に抵抗がある方にお勧めします。

11/30/2017

アインシュタイン

理系の道に進んだので物理の授業でアインシュタインの有名な E=mc を学びました。
1905年アインシュタインが26歳の時に導き出したエネルギーと物質の質量との関係が光の速さだけでシンプルに美しく表させるという公式です。
昔のアメリカのテレビドラマ Twilight Zone(ミステリーゾーン)の冒頭のナレーションの画面でも、背景にこの式が出てました。
授業では難しい話ばかりで、もっとアインシュタインとはどんな人物だったのか、といった話も聞かせてくれれば、もう少し理解も深まっていたはずなんですが…。

ということで購入したのが今回紹介するこの2冊です。
一冊は写真が中心、もう一冊はマンガです

●フランソワーズ・バリバール アインシュタインの世界(創元社)
●渡辺正雄・金子務 人間アインシュタインと相対性理論(講談社)


難しい数式も、写真やマンガなら美しいデザインに見えるから不思議です。
20世紀初めに導き出された式が原子力エネルギーの基礎になり、それは戦争に使われたこともあったものの、平和的に利用されているおかげで今の快適で便利な私たちの生活があると思います。




と、ここまで写真とマンガでだいたいアインシュタインの人となりを理解して、もう一冊。

●ポール・ストラザーン 90分でわかるアインシュタイン(青山出版社)

この本には図や写真は無く、上述の本と同様の内容が100ページほど記述されています(同じ人の生涯を書いたので同様であるのは当然ですが)。
しかし、さすが「90分でわかる」の名前の通り、巻末に「キーポイント」として、論文のポイント、名言集、アインシュタインに対する著名人のコメントがまとめられていて、知ったかぶりをするにはベストです。

11/29/2017

昭和の事件

昭和の半分くらいの頃に生まれた私は、ちょうど昭和と平成を同じくらい生きてきたことになります。
昭和の前半は全く知らないわけですが、平成と昭和、どちらを選ぶ?と聞かれれば、やっぱり昭和の方に軍配をあげてしまいます。

昭和が遠くになるにつれて、自分の記憶もだんだんモノクロームになってきます。
実際、テレビも写真も白黒が主流で、家の中も街中も今ほど明るくなかったので、当時の世の中そのものなのかもしれませんが。
昭和の事件というとやはり「未解決」とか「謎」というイメージがあります。
そういうわけで、この手の本はつい手を出してしまいます。

下山事件は、浦沢直樹さんの「BILLY BAT」にも取り上げられていましたね。ケネディ大統領暗殺事件も取り上げられてましたが、私も両事件が昭和時代を代表する謎の事件だと思います。


11/28/2017

東京裁判

今日は、文庫本3冊。
ここ2、3日太平洋戦争関係の本を紹介しましたが、その流れで東京裁判関係の文庫本2冊と、ちょっと毛色が変わりますが「オペラ座の怪人」です。

●清瀬一郎 秘録 東京裁判(中央公論新社)
●城山三郎 落日燃ゆ(新潮社)
●ガストン・ルルー オペラ座の怪人(角川書店)

「秘録 東京裁判」の著者の清瀬一郎さんは東京裁判での東条英機の主任弁護士を務めた方で、まさに裁判の当事者による記録です。
被告を含めた関係者それぞれの行動や、それらに対する著者の分析が精緻にまとめられています。
一方、城山三郎さんの「落日燃ゆ」も東京裁判を題材としたものですが、もちろん著者が当時直接裁判に関与していたわけではなく、著者の時間をかけた取材、調査に基づくものです。
著者は東京裁判で絞首刑を申し渡されたA級戦犯7人のうち唯一文官であった広田弘毅に焦点を当てました。
記録というよりは、やはり広田の生きざまをテーマに描かれた作品だと思います。

「オペラ座の怪人」は、文庫本で前者2冊と一緒に写真を撮ってしまったので、ちょっと仲間外れ的になってしまいました。
息子がNYでミュージカルを見てきたというので、どんなストーリーなのか興味を持ったので読んでみました。
息子は「よかった、よかった」と言ってましたが、文庫本の文字だけだと、残念ながらその感動が私にはなかなか伝わってきませんでした😞


11/27/2017

死刑囚の記録

●加賀乙彦 死刑囚の記録(中央公論社)

この本はなぜ買ったのか思い出せません。
東京裁判、A級戦犯などの本を読んだ後に、タイトルを見て買ったのかもしれません。

著者は精神科医で、死刑囚と面談し、記録したものです。
境遇という言葉が適当なのかどうかわかりませんが、自分とは違う世界を記したもので、なかなか自分と共有できる部分が少なく、理解が難しいと感じたような気がします。

11/26/2017

不許可写真

戦争中の情報統制に興味があったので読んでみましたが、あまり気分がいいものではありませんね。

●草森紳一 不許可写真(文藝春秋)

ネット時代になって、発信したい情報はいつでも好きに出せるようになりましたが、でも所詮、発信する側の視点でフィルタをかけてしまっていますよね。
最近マスコミの偏向報道などが話題になっていますが、情報発信を職業にしているのが個人でなく組織であれば、大差が無いようにも思えます。


11/25/2017

戦後生まれの私が体験していないこと

戦争のこと、日本軍のこと、終戦後の日本。
体験していない私には、書物で知るしかありません。

私の両親は昭和一桁生まれですが、既に他界していて、直接当時の話を聞くことができません。
もっといろいろと話を聞いておけばよかったな、と思います。

●佐治芳彦 太平洋戦争の謎(日本文芸社)
●常石敬一 七三一部隊(講談社)
●藤原帰一 戦争を記憶する/広島・ホロコーストと現在(講談社)
●小林弘忠 巣鴨プリズン(中央公論社)

1990年代後半から2000年に入った頃に読んでいました。

11/24/2017

微笑み

とりあえず、絵画関係の本の整理は今回で終了。

●布施英利 「モナリザ」の微笑み 顔を美術解剖する(PHP研究所)

モナリザは多くの謎をもった絵だといわれていますが、この本はモナリザの顔の目、鼻、口などのパーツごとに分析することから始め、「微笑み」にメスを入れた本です。







著者のプロフィールが珍しいですね。
・東京藝術大学美術学部芸術学科卒業
・同大大学院研究科博士課程(美術解剖学専攻)修了、学術博士
・東京大学医学部助手(解剖学)を経て、現在は東京藝術大学准教授。

美術と医学の両方にかかわって来られたというのは、まさにダ・ヴィンチのようですね。
(手塚治虫さんも同じかな?)

11/23/2017

パリの美術館、東京の美術館・博物館

今日は美術館、博物館の本。

●星野知子 パリと七つの美術館(集英社)
これは、ただ一言羨ましい、という感じですね。
パリの美術館を時間をかけてゆっくり巡ってみたいものです。
本の中で、ギュスターヴ・モローの「出現」について語られています。
「出現」は新約聖書のヨハネ斬首にかかわるサロメの舞を題材にした作品です。
「出現」は二枚あり、一枚はモロー美術館の油彩画で未完のもの、もう一枚はルーブル美術館の水彩画でサロンに出品されたもの。
これら二枚の絵がカラーで見開きページに並べて掲載されていて、サロメの表情、ポーズ、宙に浮いたヨハネの表情などの違いについて著者の印象が語られています。
著者のおっしゃる通り、二枚の絵のサロメはまるで別人に見えます。

●東京散策倶楽部 タダで入れる美術館・博物館(新潮社)
パリの美術館を制覇するのはとても無理ですが、いい本を見つけました。


11/19/2017

春画

西洋絵画から今度は日本に目を向けて…春画です。

●白倉敬彦 新版江戸の春画 江戸人の性愛を描く(洋泉社)
●白倉敬彦 春画の謎を解く(洋泉社)
●田中優子 春画のからくり(筑摩書房)
●田中優子 江戸百夢 近世図像学の楽しみ(筑摩書房)



いずれも白黒の新書、文庫で、画集ではありません。
春画の歴史的な生い立ちや、いろいろな作品の解説、当時の生活、風俗など、美術、歴史、社会学の解説本です。

これらの本を読むまで、北斎とか豊国、国芳といった浮世絵画家が春画も描いていたとは知らず、驚きました。

最後の一冊は、春画だけをテーマにしたわけではないのですが、江戸時代の絵画、版画、のれん、着物、手拭いなどのデザインについてエッセイ風にまとめられています。
この本を買った後に、広重の江戸百の本を買いました。本を読むと、そこから次の興味が広がっていきます。

11/12/2017

ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?

●高階秀爾 ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」はなぜ傑作か?(小学館)

この本は、カラー写真が豊富で、聖書の中のいろいろなテーマごとに、様々な画家の作品を比較しながら解説してくれます。

同じテーマであってもその時代の背景、画家の考え方などによりそのとらえ方も異なり、また、描き方も異なるんですね。

また、私たちが本などで目にする作品も、それに至るまでにいくつもの習作を経て出来上がっていることも、紹介されています。名画になるべく出来上がったということもよくわかります。

名画にはなかなか直接目にする機会もなく、まれにそういう機会に恵まれても、その絵の意味するところ、画家がどんな考えで描いたのかなどを知って見るのとそうでないのとでは大きな違いです。
そういう事前知識なく、見たままに感じるのがよい、といった考えもあるかもしれませんが、私は、絶対に事前準備をして、絵の隅々まで目を凝らして鑑賞したいですね。

著者の高階先生はこの本だけではなく、誰も知らない「名画の見方」という本も書かれています。1932年生まれですのでずいぶんご高齢ですが、もし講演会などの機会があればぜひお話をお聞きしたいです。

百鬼夜行絵巻

●小松和彦 百鬼夜行絵巻の謎(集英社)
この本は読みごたえがありました。

まず、絵巻を広げた状態の写真で絵巻の全体像が一望でき、そして一匹(一人?)ずつ鬼(妖怪)の姿も解説されていることがいいですね。
とってもユニークで愛嬌のある妖怪のパレードです。



そして、やはりこの本の素晴らしいのは、数ある百鬼夜行絵巻(世界でたった一つの作品ではないんですね)を比較して、様々な分析をされていることです。
こういうお仕事は私は大好きで、また、そういうことに取り組まれる方をとても尊敬します。

小松和彦さんの著書には「妖怪 YOKAI」(KADOKAWA)という文庫本もあります。
こちらは、百鬼夜行絵巻に出てくる妖怪はもちろんのこと、北斎、国芳などが描いた妖怪もたくさん出てきます。
文庫本ですが、ページいっぱいの写真が中心で、老眼の私でも今でも十分楽しめるので、当分手元に置いておくつもりです。


11/10/2017

岩佐又兵衛~北斎・豊国・国芳

岩佐又兵衛の名前を知ったのはテレビ東京の「美の巨人たち」だったと思います。
いつ頃だったのかな、とネットで検索すると、2006年1月15日のようです。
(参照:美の巨人たち:岩佐又兵衛「山中常盤物語絵巻」

その後、しばらくして書店で見つけたのがこの本です。

●辻惟雄 岩佐又兵衛 浮世絵をつくった男の謎(文藝春秋)


テレビで見たときは、どちらかというと絵巻物全体の「大きな作品」という印象が強かったと記憶していますが、この本は作品の部分を取り出し、拡大して解説しています。
江戸時代初期の画家ですが、現代のマンガに通じるようなタッチも見られ、面白いですね。


辻惟雄さんの本をもう一冊。

●辻惟雄 奇想の江戸挿絵(集英社)
前述の岩佐又兵衛の本を読んでから、江戸時代の画家の作品に興味を持ち、そして見つけたのがこの本です。
時代は江戸後期に下り、北斎、豊国、国芳などの作品が扱われています。
浮世絵がこんなに迫力があり躍動感があることを知りました。
私は国芳ファンになり、Pinterestで国芳の作品を集めています。

11/09/2017

ブリューゲルへの旅

ブリューゲルの作品は「ウォーリーをさがせ!」に通じるところがありますね。
見ているだけでも楽しくなりますが、やはり解説本を読んで、細かく描写された当時の人々一人ひとりの仕草とその意味などがわかると、いっそう楽しくなります。

ブリューゲルの作品を解説したもので、「ブリューゲル・さかさまの世界」(カシュ・ヤーノシュ編 早稲田みか訳 大月書店)があります。
この本を読んでブリューゲルにはまっていた頃、書店で「ブリューゲルへの旅」を見つけました。

●中野孝次 ブリューゲルへの旅 (文藝春秋)

最初は、先の本と同様のブリューゲル作品の解説本だと思ったのですが、そうではなく、ブリューゲルの作品を実際に見て、感じた印象、それから想起される思い出などをエッセイ風にまとめた、どちらかというと文学作品ですね。





1960年代中頃、著者が41歳の時に初めての海外生活となるウィーンの美術館でブリューゲルの作品に出会い、それ以来「ブリューゲルへの熱中はつづいていて…たぶん全部見て回ったと思います。」とあります。

今年の4月から7月まで、東京都美術館で「ボイマンス美術館所蔵 ブリューゲル「バベルの塔」展」が開催されました。
ブリューゲルの作品を直接目にできる貴重な機会でしたが、仕事が忙しすぎてチャンスを逃してしまいました😢

11/08/2017

猫画家 ルイス・ウェイン伝

19世紀末から活躍したイギリスの猫イラストレーターのルイス・ウェインの生涯と作品を紹介した本です。

●南條竹則 吾輩は猫画家である ルイス・ウェイン伝(集英社)

擬人化された猫のイラストを目にした方も多いと思います。
しかし、彼の晩年の様子を読み、そしてその頃の作品を見ると、楽しい猫の世界とは別世界の厳しい人生を送られたことがわかります。
全ページカラーで、一コマ漫画としても楽しめました。1世紀も前の作品とは思えません。

11/07/2017

フェルメール

今日はフェルメールの解説本です。

フェルメールにはかなり前から興味を持っていました。
残っている作品の少なさ、非常に精緻なタッチなどに惹かれたのはもちろんですが、古地図ファンの私にとって、特に背景に描かれた古地図(描かれた当時は最新地図です)は本当に素晴らしいと感心します。
絵の脇役なのに、こんなに細かく正確に描くなんて、相当の観察力があるのだと思いました。

●宮下規久朗 フェルメールの光とラ・トゥールの焔(小学館)
●小林頼子 フェルメールの世界(NHK出版)
●朽木ゆり子 フェルメール全点踏破の旅(集英社)


朽木ゆり子さんのフェルメール全点踏破の旅は、全世界に散らばっている三十数点のフェルメール全作品を一気に訪問しするという、羨ましい限りの旅です。
新書版で全ページカラーなので、この本だけはしばらく手元に置いておこうと思います。
いずれ仕事も終えたら、このうちのいくつかを回ってみれたらいいなと思います。



●フランク・ウイン 私はフェルメール 20世紀最大の贋作事件(ランダムハウス講談社)



細野不二彦さんのギャラリーフェイクにもフェルメールを題材にしたお話が出てきます。
たしか、その中にフェルメール作品の贋作の話があったと思います。
私は、メーヘレンの作品を見てもフェルメール作品の印象を全く感じないのですが、いかがでしょうか?


11/06/2017

ワケありな名画/誰も知らない「名画の見方」

絵画の解説本の続きです。

●沢辺有司 ワケありな名画 名画31点の裏鑑賞会(彩図社)
オフィーリアの表紙と刺激的なタイトルで思わず購入してしまいました。
「事件」「恐怖」「捏造」「謎」という4つのテーマで31点の名画が解説されています。
本文はすべて白黒で、カラー写真がないのがもったいないですね。

●高階秀爾 誰も知らない「名画の見方」(小学館)
これはフェルメールの 「真珠の耳飾りの少女」の表紙で買いました。
フェルメールの本を見つけると読んでいたので。
フェルメール本は次回…。



11/05/2017

絵画解説本 

中野京子さんの「怖い絵」シリーズに続いて、いくつか絵画の解説本です。
こういう解説本から、新たに気になる絵が見つかったりします。
そして、そういう絵が日本の美術館に来たりすると、本当にうれしいですね。

●日本博学倶楽部「世界の名画」謎解きガイド(PHP研究所)
●千足伸行6つのキーワードで読み解く西洋絵画の謎(大和書房)














●木村泰司名画は嘘をつく名画は嘘をつく2(大和書房)

11/04/2017

本の整理を再開しました 

忙しくてしばらくこのブログも家の片付けも滞っていましたが、少しずつまた再開しました。

最近老眼の進行が著しく、通勤時はもとより明るいところで読むのはかなりきつくなってきました。
老眼のつらさは、やっぱりなってみないとわかりませんね。

国内外の絵画に興味を持っていたので、いろいろと解説本を求めていたのですが、手放すことにします。障害をもつ方たちが運営するリサイクルショップにお譲りします。

●中野京子さんの「怖い絵」
「怖い絵」で人間を読む(NHK出版)、新 怖い絵(角川書店)です。
この本を読むまでは、どちらかといえば、絵は画家のテクニックを中心に見ていたような気がします。
一枚の絵の持つ背景や意味、そういうものを理解して見ると、全く違う楽しみができるということを教えてもらいました。
今、上野で「怖い絵」展やってますね。
ものすごく混んでいるようですね。チケット買うだけで20分も並ぶという話も聞きます。
12月までなのでぜひ行きたいと思います。


しばらく、絵画関係の本の話を続けます。