5/02/2019

シンセサイザー アナログからデジタルへ

平成から令和にかけての長期お休みを利用して家の片付けや庭の草むしりをしています。
そしたら物置から私にとってとても懐かしい本が出てきました。
音楽之友社発行の「シンセサイザー操作事典」です。

すっかり忘れていた私とシンセサイザーとのお付き合いについて書きます。

中学、高校と洋楽にはまっていて、当時モーグ・シンセサイザーというアナログシンセサイザーの斬新で変化のある音に興味津々でした。
そういうこともあり、昭和50年代後半頃、電気工作の雑誌の広告でシンセサイザーキットを見つけ、購入しました。
キットと言っても、基盤とパーツ(ICチップ、抵抗、コンデンサーなど)のみで、シャーシ(ケース)やキーボードなどは別途自分で手配しなければなりません。
それでも何とかパーツ屋さんを回り、空いている時間でシャーシの穴あけをしたり、はんだ付けしたりして、1年くらいかかったと思いますが、何とか音を出すところまで漕ぎつきました。


そのシンセサイザーはデジタルではなくアナログです。
音は空気を振動させる波なので、電子回路でその波を作り出すのですが、波の形、間隔、高さなどを変えると、音の三要素である音色、音程、音量を変えることができ、その結果、様々な音を作ることができます。
本体は、横幅60~70㎝×奥行40㎝×高さ10~15㎝くらいで、側面、下面は木製板で上面はアルミ板(自分の手作業です)。
ケースの中に100V用の重いトランスも取り付けていたので、相当の大型・重量級だった割には、単音しか出すことができません。
つまり、和音のように同時に複数の音を出すことができないのです。
キーボードはミニオルガンの鍵盤を取り付けましたが、結局指一本で弾くことになります。(ピアノやオルガンを弾けない私にはちょうど良いのですが)
さらに、やはりアナログの特性なのか、使っているうちに音が少しずつ変わってきます。
これはパーツが通電されて温度が上昇し、それに伴って特性が変化してしまうのでしょうか。
厳密には、同じ音は二度と再現できないというのが特徴ですね。
なかなか思った通りの音を作るのが難しいのです。
オシロスコープなどがあれば、ある程度波の形を見ながら調整できたのでしょうが、とにかく、回路のたくさんのつまみを適当にいじりながら音の変化を楽しんでいました。
また、アナログなので、例えば何かの記録媒体にデータを保存することもできません。
ツマミの位置をメモに取って残しておくくらいですね。

そんな中、たまたま書店で見つけたのがこの「シンセサイザー操作事典」。
木管楽器、金管楽器、弦楽器、鍵盤楽器、撥弦楽器、打楽器の他、風、地震、ネコ、小鳥などの自然音、サイレン、ヘリコプターなどの人工音などの「波」を作るためのパラメータが纏められています。
「こんな本があったのか!」と思い、即購入しました。
本を見ながらいろいろと音を作って遊んだものでした。

しかし、その後2~3年したら、ヤマハからMUSIC COMPUTER CX5というFM音源を備えたパソコン(MSXパソコン)が発売されました。
CX5のスロットにFMサウンド シンセサイザーユニットやミュージックキーボードを接続するとなんとデジタルシンセサイザー、しかも、複数音同時発生可能のシンセサイザーとなってしまうのです。ちょうどMIDIの出始めの頃だったと思います。
ちょうど就職して給料も入ってきた頃だったので、思い切ってパソコン本体と付属機器を一式購入しました。
さすがにモニターまで買う予算がなく、テレビにつないでいました。
記録媒体もフロッピーディスクではなくカセットテープでしたね。
プリセットされた音源は、いつも同じ音色を再現してくれます。
アナログで苦労した音作りの手間もなく、高音質の音源が手に入り、また、楽譜の入力、保存もできるのです。(楽譜の入力は物すごく面倒でした。マウスもなく、音符一つ一つに音程、長さ、強さなどを数字で入力したような記憶があります。それでも画期的であることは間違いありません。)
しかし、当時のパソコンはやはり性能が悪く、例えば16分音符や32分音符が続くとテンポが遅れてしまったり、楽譜を読み込むときにはにデータをカセットテープから読み込む必要があるので1分、2分待ちは当たり前、という感じで、とても人前で聴かせることは無理でした。
独身寮の自室でシコシコ楽譜を入力し、それにあわせてギターの練習をしたりしてました(暗い😞)。

その後、新しいパソコンを購入しましたが、シンセサイザーの付属機器はつかえず、何年か後に泣く泣く廃棄しました。(MSXパソコンの時代はあっという間でしたね。)

平成に入るとMIDI楽器で安い電子ピアノが多くの楽器メーカから発売され、子どもの楽器の練習用に購入しましたが、もともと鍵盤の弾けない私は触ることもなく、私とシンセサイザーとのお付き合いはその時点で終わってしまいました。
(でもサンプリング機能もついていたので、子どもの声をサンプリングして低い声や高い声にして遊びました。)

この本が見つからなかったら、この思い出はすっかり忘れていました。
記憶がかすれてしまうのに驚きましたが、ページをめくりながら一気に細かいことまで思い出すことができ、とてもうれしい気持ちです。