以前、ある本に対する批判書について紹介したことがありましたが、今回も同じパターンでしょうか?
●増田寛也 編著「地方消滅」(中公新書)
●山下祐介「地方消滅の罠 「増田レポート」と人口減少社会の正体」(ちくま新書)
前者は、各種の調査、統計データを基に将来の人口予測を行ったところ、多くの自治体で人口が減少し「消滅」に至ってしまう。それを回避するにはどうすればよいか、ということを検討、シミュレーションして対策案を提言する、というような内容。
それに対して、後者は、逆にその提言こそが地方を消滅に導くものである、とし、独自の案を提案しているもの。
私は、前者→後者の順で読みました。
私の感想としては、前者は、やはりデータを基に非常に説得力のある筋立てのように感じました。将来の予測はある程度ぶれることはあるかもしれませんが、それもこれまでのデータを基に、将来の不確実性を何ケースか想定して将来を語るというスタイルをとっているので、信頼度が増していると思います。
一方、後者で私が気になったのは、とにかく推論が多いこと。
どのページを開いても「・・・のようだ」、「・・・に見える」の表現が必ずと言っていいほど目につく。
そして、それらの推論をたくさん積み重ねて「・・・のはずだ」、「・・・しなければならない」などと結論づける。
データを基にした論理展開が際立っている前者を読んだ後に、推論ばかりの後者を読んだせいか、非常にモヤモヤ感、イライラ感が残っています。
また、後者では、著者が知っている範囲ではこういうことを実践している人もいるので、必ずしも増田レポートの提言に従う必要はない、というような論理展開も見受けられましたが、そのような事例が世の中の傾向を代表しているようなものなのかどうかが示されていないので、なかなか私を「なるほど」という気持ちにさせてくれませんでした。
提言自体には賛同できるところがたくさんあります。家族や地域を大事にするという発想は、子供の頃は祖母を含め6人の家族で、また、近所との付き合いも深く、お互いを気にかけてくれるような環境で育ってきましたので、非常によく理解できます。
しかし、残念なのは、客観的なデータの裏付けがあまりにも少なく(もしかすると別著でそのあたりを解説されているのかもしれませんが)、また、時折、太平洋戦争当時の国の政策などと結びつけるような強引な論理を展開されるため、前者のような「信頼度」が感じられなかったということです。
ところで、書店ではこの2冊が並んて陳列されていました。私は、前者を買おうとして書店に行ったのですが、すぐ隣の後者のタイトルが目に入ればやっぱり買ってしまいますよね。
しかし、前者を批判している後者の方が値段が高い!というのは・・・
前回に引き続き、誰かに踊らされているのでしょうな。
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